ESJ58 一般講演(口頭発表) J2-01
*永野聡一郎(東北大・院・生命科学), 齋藤佳奈(宮城大・食産業, 東北大・院・生命科学), Wenhui Zhang(Sch. of Life Sci., Liaocheng Univ.), 矢野歳和(宮城大・食産業), 森長真一(東大・院・総合文化), 日出間 純(東北大・院・生命科学), 彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)
紫外線(UV)の増加は生物にとってDNA損傷の原因となり、生育不全や生産性の低下につながる。植物はUVストレスに対して、いくつかの生理的防御メカニズムをもっている。例えば、UV吸収物質の蓄積はフィルタ-として機能する。また、UVにより形成されるシクロブタンピリミジン二量体(CPD)のようなDNA損傷はCPD光回復酵素によって修復される。野外でUV強度は標高とともに増加する。しかし、高標高に生育する植物についてDNA損傷を評価した研究はない。我々はモデル植物シロイヌナズナに近縁で山地帯下部に生育するハクサンハタザオ(ハクサン)から高標高域で分化した生態型であるイブキハタザオ(イブキ)を材料に、?UVによるDNA損傷は高標高で増加する、そして、?イブキはハクサンよりもUV耐性を増しているとの仮説を検証した。現地の異なる標高にて個体を採集し、CPD含量・UV吸収物質含量・CPD光回復酵素活性を測定した。CPD含量は標高が高くなるほど増加し、UVストレスが高標高で大きいことが示唆された。同じ標高ではハクサンよりもイブキのほうが少なく、イブキのほうが高いUV耐性をもつことが示唆された。CPD光回復酵素活性には大きな違いがなかったが、UV吸収物質は生育標高とともに増加し、同一標高ではイブキのほうがハクサンよりも多くのUV吸収物質を蓄積していた。これらの結果から、高標高ではUVが有意なダメ-ジを与えていること、高標高に適応した植物が高いUV耐性をもつことが示唆される。