ESJ58 一般講演(口頭発表) J2-03
*高橋さやか(京大・農),岡田直紀(京大・農),野渕正(京大・農)
広葉樹の道管配列は、管孔性の違いで大きく3つ(環孔材、散孔材、半環孔材)に分けられる。また、その開葉様式は大きく3つ(一斉型、一斉+順次型、順次型)に分けられ、春先の開葉後の葉のフェノロジ-は開葉様式によって異なる。本研究では、道管形成と葉のフェノロジ-との関係を調べることで、道管配列と開葉型との関係を明らかにしていくことを目的とする。
京都大学芦生研究林に生育する林冠を形成する落葉広葉樹(環孔材樹種、散孔材樹種、計10樹種)について、樹幹の成長錐コアを春先から2週間ごとに採取し、同時に葉のフェノロジ-を観察した。環孔材樹種の道管を通水性に着目して3段階(大径、中径、小径)に分け、木化過程を顕微鏡観察を通して調べた。
その結果、環孔材樹種、散孔材樹種ともに、一斉開葉型も、一斉+順次開葉型も見られた。環孔材樹種では大径道管を開葉開始以降に形成し始め、葉の拡大2週間前から2週間後に完成した。また、一斉開葉型では一斉+順次開葉型より中径道管を形成する個体が少なく、一斉開葉型では葉の拡大時から2週間後に中径道管を形成し、一斉+順次開葉型では葉の拡大時から4週間後に中径道管を形成した。
以上の結果から、環孔材樹種では開葉から葉の拡大までの、蒸散能力が急激に増加する時期に、通水性の大きい大径道管を形成し、中径道管の形成時期は、一斉開葉型では葉が拡大し、蒸散能力が収束する時期、一斉+順次開葉型では順次葉の増加する、蒸散の増加がより小さい時期であると考えられる。従って、環孔材樹種では蒸散と水輸送の関係からも、道管配列と開葉型に密接な関係がある可能性が示唆される。