ESJ58 一般講演(口頭発表) J2-12
*蒔田明史,佐藤綾香,井上みずき,佐藤朋華,品川朋仁(秋田県大・生物資源),松尾歩,陶山佳久(東北大・農)
ササは長寿命一回繁殖性植物とされ、広域にわたって同調的に開花する“一斉開花”現象が良く知られている。しかし、その一方で、比較的小面積の開花を見る機会も多い。こうしたいわゆる“部分開花”はササの生活史にとって意味のある現象なのであろうか。それとも、単に弱ったジェネットが「死に花」を咲かせているだけなのであろうか。
我々はジェネットを単位としてササの開花現象を解析することにより、広域同調開花という特異な生活史特性がどのように発達してきたものなのかを考えようと取り組んでいる。本研究では、“部分開花”に焦点を当て、ジェネット構造や結実率、自殖率などを明らかにすることによって、”部分開花”が?単独ジェネットによる開花なのか。?生涯繁殖成功度に寄与しうるものなのか、について検討した。
調査は、秋田県内を中心に2008年と2009年に小面積開花が見られた26地点において行った。各調査地で開花面積を測定した後、原則として開花稈8本、周囲の非開花稈8本から葉を採取してDNAを抽出し、マイクロサテライト8遺伝子座による多型解析によりジェネット識別を行った。このうち7地点において、穂に袋がけをして花序ごとの結実率を求め、さらにその一部については、種子のDNA解析も行って自殖率を求めた。
その結果、26カ所のうち、単一ジェネットのみの開花が2/3を占め、残りは複数ジェネットによる同調開花であった。一方、ほとんどの開花ジェネットは非開花稈も有しており、ジェネットの一部のみが開花している場合が全体の92%を占めた。発表では、こうした結果をもとに、ササの一生における“部分開花”の意味について考察したい。