ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-015
*鈴木智博(富大・理),初鹿宏壮(富山県環境センタ-),飯田肇(立山カルデラ砂防),川田邦夫(富大・名誉教授),和田直也(富大・極東地研)
地球温暖化の影響が現れやすいと考えられている高山生態系において、その影響を評価するためには、植生の変化を長期的に記録していくことが必要である。本報告では、雪田植生を対象に、長期モニタリングが可能な非破壊的な手法を用いて植生調査を行い、調査時点における植生の構造と融雪時期との関係を考察した。
富山県の立山室堂平(標高2460m)においてPoint Intercept Method(PIM)を用いることによって植生調査を行った。約100mの長さの帯状調査区を2つ設定し、それぞれの調査区に10m間隔で10点の植生調査地を設定した。それぞれの植生調査地には、深さ約5cmでの地温を1時間間隔で記録するデ-タロガ-を設置した。PIMは地温計を中心に東西南北に10cmごと、一方向につき5ポイント、合計20点調査を行ったもの(以下十字法と呼ぶ)と、1m×1mの正方区画に10cmごとに1ポイント、合計100ポイント調査を行ったもの(以下格子法と呼ぶ)の2種類を用いた。格子法の調査区画は地温計を中心とした半径2mの円の一部と1m×1mの正方区画の一部が重なるように設置した。
1回の調査当たりのポイント数が少なく調査が容易な十字法では、ポイント数が多くより多くの労力が必要となる格子法に比べて、種の検出力は劣っていた。しかし、十字法、格子法共に植生全体で見たときには融雪時期とShannon-Wienerの多様性指数、融雪時期と種数、融雪時期と優占度において負の相関がみられた。以上のような結果に基づき、融雪時期と雪田植生の構造との関係について考察を行った。