ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-021
*森長真一(東大・総合文化), 長谷和子(東大・総合文化), 永野惇(生物研), 伊藤元己(東大・総合文化),
近年の遺伝子解析技術の向上と発展により、過去の生物と現存する生物の遺伝子比較が可能となってきた。これは数十年という時間スケ-ルでの進化研究にも大きな革新をもたらしている。
ハクサンハタザオとその派生系統であるイブキハタザオは、モデル植物シロイヌナズナに最も近縁な植物であり、シロイヌナズナで明らかとなってきた多くの知見を適用することができる。また100年以上前から様々な生育地で採取されており、その標本が全国の博物館等に収蔵されている。そこで現在、ハクサンハタザオとイブキハタザオの標本の遺伝子解析を通じて、分子「古」生態学的研究を展開している。いわば、過去の生物の遺伝子解析に基づく「進化の直接観察」の試みである。
本研究では、伊吹山・藤原岳の標本個体と現生個体を対象に、局所適応に関与している適応遺伝子や二酸化炭素応答関連遺伝子などの機能遺伝子と進化的に中立なマイクロサテライト遺伝子座の時空間動態を解析した。発表では、対立遺伝子の時空間動態と近年の環境変動の関係を考察するとともに、「古」生態ゲノム学への展望に関しても触れる。