ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-023
*平舘俊太郎(農環研),白川勝信(高原の自然館),森田沙綾香,小柳知代,中西亮介,楠本良延(農環研),太田陽子(緑と水の連絡会議),大竹邦暁(中電技術コンサルタント),佐久間智子(西中国山地自然史研究会),堤 道生,高橋佳孝(近中四農研)
広島県北広島町の雲月山では、生物多様性の保全上重要な半自然草原が、火入れや放牧等の管理によって維持されている。しかし、部分的には外来植物の侵入を受けている場所もあることから、草原の管理手法の違いや土壌特性の違いが、出現する植物の種類に影響を与えている可能性が考えられる。そこで本研究では、雲月山の半自然草原内にて、放牧地(6年目、5地点)およびこれに隣接した非放牧地(5地点)について、出現している植物種およびいくつかの土壌特性(表層0-5cm)を比較した。非放牧地では、シラヤマギク、オトコヨモギ、トダシバ、チゴユリ、ワレモコウ、ササユリなどが特徴的かつ高頻度で出現していた。これに対して、隣接する放牧地では、これらの種は出現せず、シロツメクサ、ヘラバヒメジョオンといった外来種が侵入し、かつ出現する在来種も、ツボスミレ、ヨモギ、ウシハコベなど、非放牧地では見られない種が多数出現していた。土壌の化学特性は、非放牧地が比較的強酸性(土壌pH: 4.6)かつ低有効態リン酸状態(Bray II P: 27-36 mg P2O5 kg-1)であったのに対して、放牧地では部分的に土壌酸性の中和が進んでおり(土壌pH: 5.0-5.7)かつ有効態リン酸も局部的に上昇していた(Bray II P: 62-446 mg P2O5 kg-1)。このような土壌特性の変化は、6年間の放牧期間中に、植物バイオマスに含まれていた植物栄養元素等が無機化され土壌に供給されたために起こったと考えられた。すなわち、草原の管理方法が土壌特性に影響を与え、それに伴っていくつかの植物は分布を変えた可能性が考えられた。