ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-028
*保要有里, 露崎史朗 (北大・環境)
絶滅のおそれのある種について、局所個体群の構造・動態を明らかにすることは、保全上重要な意味をもつ。特に、サイズ構造と空間構造の双方からのアプロ-チは、種子・栄養繁殖体の散布様式などの属性を明らかにするだけでなく、個体の分布に影響を与える環境因子も評価できる可能性がある。
ナガバノモウセンゴケ(ナガバ)は、日本においては3ヶ所しか生息が報告されておらず、各自生地においても個体群の縮小が危惧されている。ナガバの個体群構造を明らかにするために、北海道サロベツ湿原において調査を行った。この自生地には、より広い生息域を持つ同属のモウセンゴケが同所的にも生息している。これら2種の分布パタ-ンを比較することで、ナガバの分布特性をより明らかにできると考えた。サロベツ湿原における約15ha内の2種の共存地に、300cm×50cmのプロットを5本設置し、その中の2種全個体の位置とサイズ、果実数を測定した。またプロットを10cm×10cmに分割した格子の四隅における水位を計測し、その平均値を平均水位とした。
サイズ分布は2種間で明白に異なり、その違いは主に、モウセンゴケに比べナガバが冬芽による栄養繁殖をより多く行うことに起因していた。また、ナガバは花形成にはモウセンゴケよりも大きなサイズを必要とした。空間分布は、両種とも集中分布であったがこれら2種の集中斑の重複は低かった。この低い集中斑の重なりは、主に水位により規定されるものと考えられたが、さらにミズゴケなどとの分布関係が関与することが示唆された。