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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-029

性比・開花率の集団間変動に影響を与える湿地の栄養塩環境:雌雄異株クロ-ナル植物ヤチヤナギ

*井上みずき(秋田県大・生物資源),久米篤(九大・農院),智和正明(九大・農院),上原佳敏(九大・生物資源環境科学),石田清(弘前大・農学生命科学)


雌雄異株植物の性比はしばしば偏ることが知られている。こうした偏りには、生息地の光・水分・土壌の化学性などの環境要因が関与していることがある。メスは一般に、果実を生産するため繁殖コストが大きくなりやすい。したがって、ストレス環境条件下では、メスは開花を抑制したり、死亡率が高くなったりし、結果的に集団の性比がオスに偏ったりする。本研究では、雌雄異株植物ヤチヤナギ15集団を対象に、生息地である湿地の栄養塩環境が集団の性比にどのような影響を及ぼすのかを明らかにした。性比は0.59−1.00であり、いずれの集団においても有意にオスに偏っており、さらに、3集団ではメスが全く存在しなかった。性比がオスに固定している3集団をのぞいた12集団の性比と湿地の窒素・リン・カリウム・マグネシウムやpHとの関係を解析したところ、カリウムのみが選択された。カリウムの増加に伴い、メスの割合が増加する傾向が見出された。カリウムは気孔の開閉や水分の保持などの生体機能と関係し、カリウム不足は水不足や耐凍性の減少・塩性土壌への適応性減少などをもたらすため、高緯度湿地環境下に生息するヤチヤナギでは重要な環境要因なのだろう。ただし、メスの消失した集団については、カリウムの影響だけでなく、集団の孤立小集団化が影響している可能性がある。


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