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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-030

日本国内のアカマツ天然集団における球果と種子の形質変異

*岩泉正和,大谷雅人,高橋誠,宮本尚子,平岡宏一,矢野慶介


アカマツは我が国の主要針葉樹の一つであり,国内では東北から九州まで広く分布するが,地域性に配慮した当該樹種の保全に重要な,国内分布域全体にわたる天然集団間の適応形質の変異についてはほとんど知られていない。本研究では,アカマツの繁殖形質の変異と,それに影響する要因を明らかにするため,日本各地のアカマツ天然集団から球果を採取し,球果サイズや種子の稔性の変異を解析した。

青森県東北町から宮崎県霧島山麓に至るアカマツ28集団,計628個体から,個体当たり最大3個,計1,777個の球果を採取し,採取個体の胸高直径を測定した。各球果のサイズ(長径・短径・球果重)と,球果当たりの鱗片数・充実種子数・充実種子重を計測し,球果当たりの充実種子率(充実種子数/胚珠数(鱗片数×2))・充実種子1粒重(充実種子重/充実種子数)を算出した。そして,上記形質の集団平均値と,集団の平均個体サイズや緯度・経度,生育地の環境条件(気温・標高・降水量等)の相関関係を解析した。

球果長径・短径は,緯度や経度の大きい集団ほど有意に大きく,気温の低い生育地の集団ほど大きかった。一方,球果当たりの鱗片数は,気温の高い生育地の集団ほど有意に多かったが,集団の緯度・経度とは明瞭な相関関係は見られなかった。球果サイズや鱗片数と平均個体サイズの間には明瞭な相関関係は見られなかった。

以上のことから,アカマツの球果サイズには地理的な変異が存在し,気温のような集団の生育環境の違いがそれらの変異に関係している可能性が考えられた。今後は,球果採取個体のDNA分析等を行うことにより,地史学的な要因に基づくアカマツの遺伝変異と,球果や種子の形質変異の関係等について解析を進める考えである。


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