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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-031

高山風衝地におけるハイマツ実生の消長

森広信子(所属なし)


南アルプス北岳ボ-コン沢の頭付近の風衝地で、1996年からハイマツ実生のカウントを行った。発生した実生にはラベルをつけて、以後の追跡を行った。

調査地は矮性低木・草本混生地と砂礫地、ハイマツ及びミヤマハンノキの低木のパッチが混在し、実生は主に矮性低木・草本混生地に発生するが、ハイマツ等の低木の縁や、砂礫地にも多少発生した。発生状況は単独のこともあるが、2個体以上がかたまって発生することも多く、主にホシガラスの貯食した場所からの発生と考えられる。

実生の発生数は年変動が大きく、変動係数は1.43と、球果生産の変動係数0.71(中新田、1995)より大きい。変動は不規則で、一定の傾向は見つからない。

実生が発生してから最初の冬を越して春(6月)までにかなりの数の実生が失われ、1年後まで生き残るものは11%?86%だったが、3年目以降は死亡率が大きく下がり、ばらつきはあるものの20%以下になった。実生の死亡要因は特定できないものが多く、冬季の乾燥・脱水や春のホシガラスによる種子回収と思われるものがいくつか見つかっただけである。

実生が発生している場所は多くが生長したハイマツが存在しない場所で、実生の定着も起こりにくいと推測されるが、そのような所に発生が多いのは、被圧のない所に種子を運ぶ散布者の習性によるところが大きい。ハイマツ実生の生長は環境条件の悪さを反映して遅く、10年生でも数センチしかないが、初期の2年を生き残れば、その後は死亡率が下がって、少なくとも待機状態にはなれるようだ。


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