ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-036
*平田晶子(森林総研),上條隆(筑波大・生命環境),齋藤哲(森林総研)
着生植物はそのハビタットの多くをホストとなる樹木に依存しており、1本のホスト樹木に数多くの種が着生することもめずらしくない。このようなホスト樹木内での着生植物の多種の共存には、ホスト樹木内の垂直方向の微気象条件の傾度が貢献していると考えられている。着生植物の着生部位は種ごとに偏ることが多く、熱帯の雲霧林や乾燥林における研究では、特に水分条件に対する特性が着生部位や成長量に影響をあたえることが報告されている。しかし、これらの特性の重要性は、地域的な気候条件や森林タイプの違いによって変化する可能性がある。そこで本研究では、暖温帯域の常緑広葉樹林において、同所的に高頻度で出現する2種の着生シダを対象に、光・水分条件の違いが成長量にどのような影響を与えるかを検討した。
対象とした2種の着生シダは、演者らの南九州の常緑広葉樹林における研究によって、ホスト樹木内での着生部位が異なることが報告されているマメヅタとノキシノブである。同地域の常緑樹林において、2種のシュ-トもしくはラメットをジェネットごとに採取した。採取した個体は、2通りの光・水分条件を組み合わせた4通りの条件下において6ヶ月間栽培し、葉および根茎の成長量を条件間で比較した。
栽培実験の結果、2種ともに、高い光条件下でより大きな葉の成長量を示した。一方、水分条件に対する反応は2種間で異なった。ノキシノブは水分条件に関わらずより良好な光環境のもとでより大きな成長量を示したが、マメヅタは少ない光条件の下では、より低い水分環境下で大きな成長量を示した。
発表では、根茎の成長量や実際のホスト樹木内の光・水分環境の違いについての結果を加え、ホスト樹木内の環境条件の傾度が、着生シダ2種の共存に与える影響について考察する。