ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-042
山根理紗子・可知直毅・鈴木準一郎(首都大・理工・生命)
根は成長の過程で、物理的障害物に土壌中で遭遇し、障害物に接触した根の先端では分枝が促されると言われている。分枝により根の表面積が増えれば、資源吸収効率が上がり、植物の生物量が増大する可能性がある。一方で、物理的障害物は、根の伸長成長を妨げる可能性もある。そこで本研究では「土壌中の物理的障害物の密度によって植物の成長は影響される」という仮説を立て、栽培実験により検討した。
ホソムギ(Lolium perenne)を、7号のポリポット1鉢に1個体ずつ栽培した。ポットには芝の目土と赤玉土の混合土壌2000mlと、遅効性化学肥料(マグアンプK)を5.0g入れ、さらに、障害物(直径5mmのガラスビ-ズ)を4段階の密度(なし・低密度・中密度・高密度)で加えた。14反復をビニ-ルハウス内で8週間栽培し、刈り取り後、個体の乾燥重量(g)を秤量した。7反復については、総根長・根の分枝を、画像解析ソフトScion Imageにて測定した。
個体重・総根長・分枝に障害物の密度間で有意な差が認められた。障害物の存在下で、個体重は小さくなり、中密度で低密度・高密度よりも小さかった。地上部重量は、個体重とほぼ同様に有意差を示したが、地下部重量には有意差が見られなかった。地下部への物質分配は、高密度で大きい傾向にあった。総根長・分枝も、障害物の存在下で、有意に減少し、中密度で低密度・高密度よりも小さかった。
以上より、土壌中の障害物密度の増加は個体成長を阻害することが示唆された。また、高密度では地下部への物質分配が大きかったために、個体重の低下が少なかったのかもしれない。