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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-044

多年草レンゲショウマの地下茎から読み取る過去の開花履歴

鈴木まほろ(岩手県立博物館)


個体の寿命と繁殖回数の関係、成長と繁殖の切替タイミング、栄養繁殖と種子繁殖への資源分配など、繁殖生態学的に興味深い理論のいくつかは、野外で多年草の生活史を調べることによって検証が可能である。しかし多年草の生活史を知るには、一般に10年以上にわたる個体追跡調査が必要であり、個体の寿命や繁殖年齢・繁殖回数などの基本的な事項についてさえも、正確な情報が得られている種はきわめて少ない。

キンポウゲ科の多年草レンゲショウマAnemonopsis macrophyllaは、地下茎に残る芽鱗痕の数から個体のおよその年齢を推定することができるという、研究材料として非常に優れた特徴を持っている。またレンゲショウマの地下茎は、仮軸分枝型の伸長様式を示す。花茎をつけない年には頂芽から主軸がまっすぐに伸び続けるが、花茎に分化すると頂芽は消滅し、下部にある側芽が成長し始めるので、地下茎には分岐が生じる。したがって、地下茎がいつ・何回分岐したかを調べることで、その個体がいつ・何回花茎をつけたか、すなわち個体の開花履歴を、過去をさかのぼって知ることが可能と考えられる。

筆者は、岩手県遠野市にあるレンゲショウマの北限個体群において、2005年から2010年までの6年間、個体の生活史追跡とサイズ測定を行ってきた。2010年秋に、それらのうち50個体を掘り上げ、地下茎の分枝パタ-ンと芽鱗痕の数から、年齢と過去の開花履歴の読み取りを試みた。読み取りにあたっては、6年分の個体追跡デ-タと比較対照しながら行い、読み取りの精度を高めた。この結果、個体の履歴は最も長いもので17年前までさかのぼることができた。最初の開花に至るまでの年数は、3年から15年までとばらつきが大きかった。さらに、繁殖開始年齢および開花回数と体サイズ指標との関係について、解析を行った結果を報告する。


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