ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-056
*池本美都,大串隆之,安東義乃,京都大学生態学研究センタ-
花と送粉者の相互作用は生態学的にも進化学的にも重要な研究課題であり、これまで種々の観点から研究されてきた。しかし花は送粉者だけでなく、花食者や捕食者といった異なる機能を持つ生物にも利用されている。また花の形質は生長期での葉食者の食害量により大きく変化する。このような送粉者、捕食者、花食者、葉食者を含む生物間相互作用の解明なくして、花をめぐる生物群集の理解は望めない。そこで本研究は、花を介した節足動物間の相互作用ネットワ-クの解明を目的とした。
生長期の植物に対する葉食者の食害が花の形質と訪花者に与える影響を明らかにするため、京都大学生態学研究センタ-の圃場にて、セイタカアワダチソウを用いた操作実験を行った。ポット植えのセイタカアワダチソウ100株を、2010年7月4日から10月7日まで、寒冷紗で覆った小型温室で育成した。7月5日、50株には優占植食者のアワダチソウグンバイを4個体ずつ接種し、残りの50株には何も接種せず対照区とした。開花直前の10月7日から10日にかけて、グンバイ接種株48ポットと非接種株35ポットを屋外に設置し、10月15日から11月11日まで計12回、花序上に見られた節足動物の分類群とその個体数を記録した。
グンバイの接種により、植物と節足動物に次のような関係が認められた。植物サイズ、花梗数、小花量、花序軸長が有意に低下した。双翅目やミツバチ(送粉者)クモ(捕食者)、鱗翅目幼虫(花食者)の訪花数は有意に減少した。一方、アリとアブラムシの数は有意に増加し、テントウムシの訪花数も増加傾向が見られた。さらにアリの存在は鱗翅目昆虫の訪花数に対して負の影響を与えることが示唆された。またグンバイの食害に関わらず、クモの存在はミツバチの訪花数を有意に減少させた。これらの結果から、花を介した相互作用ネットワ-クについて考察する。