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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-062

アゲハを介した送粉過程:花粉1粒DNA解析を用いた各花形質の送粉貢献度の測定

*廣田峻,新田梢(九州大・生物),陶山佳久(東北大・農),川窪伸光(岐阜大・応用生物),安元暁子(京大・生態研センタ-,チュ-リッヒ大・ 理),矢原徹一(九州大・生物)


動物による送粉は,送粉者を花に誘引する過程と,訪花した送粉者と柱頭,葯間で花粉を授受する過程に分けられる。このため,送粉者の違いによる適応的種分化の過程について理解を深めるには,花色・花香などの誘引に関する形質と,柱頭や葯の位置などといった花粉授受に関する形質の両方について,送粉・受粉成功への貢献度を評価する必要がある。

本研究では,それぞれアゲハとスズメガに適応したハマカンゾウとキスゲを用いて,各花形質の送粉・受粉成功への貢献度を測定した。室内にハマカンゾウとF2雑種で構成された実験集団を設置し,訪花未経験のナミアゲハ1個体を自由に訪花させた。訪花後,柱頭上の花粉を採取し、各花粉の遺伝子型を特定することにより,各株の送粉・受粉成功を評価した。訪花された株を入れ替え、ナミアゲハ計31個体について実験を繰り返した。

アゲハは花色と花茎の高さに有意な選好性を示した。受粉成功は、花色・花茎の高さに加え、花柱の長さと花冠の向きに有意に影響された。一方,送粉成功では有意な効果のある形態形質はみられなかった。送粉・受粉成功を統合した指標では,花色,花柱の長さに有意な効果がみられた。すなわち、誘引形質(花色)と花粉授受に関する形質(花柱の長さ)がともに送受粉成功に影響していた。形態形質は受粉成功(雌適応度成分)のみに影響していた。この結果は,花柱が雄蕊より長いため、翅が葯よりも柱頭と接触しにくいというキスゲ属の花とアゲハの関係を反映したものだろう。


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