ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-064
*中村祥子(北大・環境科学院), 工藤岳(北大・環境科学院)
様々な量の報酬が提示される野外採餌環境の中で、マルハナバチは採餌効率を最大化するような行動を取ることが知られている。マルハナバチの採餌行動は、パッチ選択から始まり、花序選択、花選択、花における実際の採餌という4段階から成り立っている。本研究では、報酬量が非常に少ないパッチに遭遇したマルハナバチが、この4段階の採餌行動をどのように変化させるのかを調べた。トリカブト属植物2種を用いて、区画内の花全ての蜜腺を切除して、報酬(蜜)をなくした蜜腺切除区と、蜜腺を切除しないコントロ-ル区を設定した。そして、マルハナバチの区への訪問頻度、花序への訪問数、花序内連続訪花数、花内吸蜜回数を比較した。
蜜腺切除区への訪問頻度と花序内連続訪花数は、コントロ-ル区に比べ有意に低かった。これに対して、花序訪問数は蜜腺切除区で多かった。花序内連続訪花数の低下と花序訪問数の増加の相殺効果により、1匹のハチが区画内で訪花する花数に差は見られなかった。また、花内吸蜜回数に差は見られなかった。
本研究から、マルハナバチは花序内で連続的に空花に遭遇したとき、その花序を早くに見限り、近くの花序へ移動することが明らかとなった。マルハナバチは、さらに空花遭遇が続いても、区内での訪花花序数を減らすことはせず、むしろ増加させていた。空花の続く区画内で花序訪問数を増加させることは、より正確な近隣の資源量の評価ともなる。こうして得た正確な区画内の蜜量把握は、それ以降のその区への訪門頻度に反映されるかもしれない。一度蜜のない区画を訪れたマルハナバチは、その区画への再訪問を避ける、あるいは訪問頻度を低下させることで、採餌飛行全体の採餌効率の低下を防いでいると考えられる。