ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-069
*中瀬悠太, 加藤真(京大院・人環)
ネジレバネは昆虫の寄生者でオスの成虫は自由生活だが、メスは終生寄生性であり、メス成虫は頭部を寄主の体外に出し、そこで交尾し微小な幼虫を放出する。ハナバチ寄生性のネジレバネの一齢幼虫は便乗に特化した形態をしており、花の上で放出された一齢幼虫が別のハチに便乗して巣まで運ばれ、ハチの卵や幼虫に寄生する。ネジレバネに寄生されたハナバチは生殖能力を失い営巣しなくなる。ハナバチの成虫は一般に花粉を食べないため、寄生されたハチにとって花粉には餌資源としての価値はない。そのためネジレバネに寄生されている個体が送粉者への報酬のほとんどが花粉である花を訪れてもハチにとってエサとなる報酬は少ない。一方、ネジレバネにとっては花蜜に関係なく、営巣している正常なハチが多く集まる花に寄主を向かわせ、そこで幼虫を放出したほうが効率的に便乗、感染できるはずである。
そこで本研究ではネジレバネに寄生されたハナバチの訪花行動がどの程度ネジレバネにコントロ-ルされているか明らかにするために、2010年7月17日から7月26日にかけて長野県小谷村周辺で調査を行った。花蜜と花粉を出すトリアシショウマと、報酬のほとんどが花粉であるエゾアジサイが同時期に同所的に開花している場所でハナバチを採集した。この中で、どちらの花にも頻繁に訪花しており、充分な個体数が得られ、かつネジレバネの寄生がみられたニジイロコハナバチに特に注目した。ネジレバネの寄生が見られた種について、ネジレバネの寄生の有無による集粉行動の違い、それぞれの花に来ていたハチのネジレバネの寄生率を求めた。これにより野外の個体群においてネジレバネによるホストコントロ-ルとしての訪花行動を明らかにしようと試みた。ネジレバネがハナバチの行動や送粉共生系全体に与える影響についても考察する。