ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-138
*Yoshitaka UCHIDA (NIAES), Seiichi NISHIMURA (NARO), Hiroko AKIYAMA (NIAES)
近年土壌呼吸(RS)のコントロ-ルメカニズムに大きな関心が寄せられている。RSには炭素基質が必要とさており、その定量化はRSをフィ-ルドレベルで正確に予測するために重要である。しかし、RSは植物や微生物などが様々な炭素基質を用いて行っているため、土壌炭素基質の定量化は非常に難しい。
そこで本研究では、二つのダイズ畑土壌(黒ボク土と灰色低地土)を対象として、成長期から収穫期、収穫後にかけて基質枯渇がどのように起きているのかを定量的に評価することを目的として行った。RSは自動開閉チャンバ-を用いて2010年7月~2011年1月まで測定した。また、同時期に毎月土壌を採取し、20℃と80℃で二段階に水抽出し、溶出した有機炭素をそれぞれwater soluble carbon(WSC)とhot-water soluble carbon (HWSC)として呼吸炭素基質の評価を行った。呼吸炭素基質としての利用性はWSC>HWSCである。
本研究の結果、RSとWSCは測定期間を通して二つの土壌で明確な差はなく、ダイズ成長期の7月末にピ-クを迎え、8-9月の間に減少した。その一方、HWSCは9-10月の間に減少した。さらに、HWSCは測定期間を通して灰色低地土で高い値を示した。
以上から、RSと炭素基質の関係は植物の成長により変化していることが明らかとなった。成長期には、主に植物由来の高利用性炭素基質が呼吸に利用されたため、WSCとRSに強い相関が見られたと考えられる。また、急激な減少がWSCは8-9月に見られ、HWSCは9-10月に見られたのは、植物由来の炭素が減少した際、WSCが初めにRSに用いられ、その後WSCが枯渇するとHWSCが用いられるという二段階のステップがあったためだと推測された。