ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-140
*米川修平(鳥取大・院・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC)
岡山県真庭市蒜山地域では土壌中から1000年以上前の植物炭化物片が発見されているため、1000年以上前から火入れが行われていた可能性がある。火入れの際に燃焼するバイオマスは炭となって土壌中に長期間蓄積し、火入れ後に再生した植生が火入れで放出した炭素を吸収するため、火入れの炭素収支は蓄積の方が多い可能性がある。しかし火入れ地における炭素蓄積量、その蓄積過程と分布様式は未解明である。本研究では蒜山地域の火入れ地における炭素の蓄積過程と分布様式を明らかにし、その蓄積量を定量化することを目的とする。
火入れ地の尾根部と谷部において、斜度、土壌硬度、バイオマス、黒色土層の厚さ、植物炭化物量を測定した。また燃焼前後のバイオマス中の全炭素量を測定し、火入れによる炭素蓄積量、炭素放出量、炭素収支を求めた。斜度とバイオマスの関係に負の相関がみられ、斜度と土壌硬度の関係に正の相関がみられたことから、バイオマスは地形によって異なることが明らかとなった。バイオマスと燃焼後のバイオマス中の全炭素量の関係、燃焼後のバイオマス中の全炭素量と植物炭化物量の関係に正の相関がみられたことから、バイオマスが多いと生じる植物炭化物量が多くなることが明らかとなった。バイオマス、燃焼後のバイオマス中の全炭素量、植物炭化物量は尾根部よりも谷部で多い傾向がみられ、斜度と黒色土層の厚さの関係に負の相関がみられた。これらのことから尾根部よりも谷部でバイオマスが多いために炭素蓄積量が多くなり、さらに土壌流出により谷部での分布が多くなったと考えられる。
本調査地における火入れの炭素収支は蓄積の方が多かった。植物炭化物量と炭素収支の関係に正の相関がみられたことから、火入れの炭素蓄積量は植物炭化物量が多いと多くなることが明らかとなった。火入れの炭素収支は正であったため、火入れが大気中の二酸化炭素量を増加させていない可能性が示唆された。