ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-141
*長谷川由布子(北大院・環),福澤加里部(北大FSC),渡辺恒大(北大院・環),柴田英昭(北大FSC),黒岩恵(農工大院・農),磯部一夫(東大院・農),木庭啓介(農工大院・農)
森林土壌での窒素の無機化・硝化過程は、森林生態系の窒素の内部・外部循環を支える重要な過程である。本研究では、近年の気候変動による積雪量減少に伴う土壌の凍結融解の増幅が、窒素の無機化・硝化過程に与える影響について明らかにすることを目的として、森林表層土壌を用いた培養実験を行った(野外積雪量操作実験と室内培養実験)。
野外実験は北海道北部の実験苗畑内で行い、対照区(最大積雪深約100cm)、積雪50%除去区(50R)、同100%除去区(100R)を設けた。北大雨龍研究林内にて鉱質土壌(0-10cm)を採取し、培養試料とした。レジンコア法を用いて2009年11月-2010年4月に各区で現地培養を行った。各5反復で降雪前、厳冬期、融雪前、融雪後にコアを回収して土壌とイオン交換樹脂に含まれる窒素含有率、水分率を分析し、正味無機化・硝化量、溶存有機態窒素(DON)・炭素(DOC)濃度、総無機化・硝化速度、総有機化速度を求めた。室内培養実験では、温度振幅変化(水分一定)と水分率変化(温度一定)条件下で培養を行い、現地実験と同様に正味無機化・硝化量、DOC濃度を算出した。
本研究結果から、積雪低温環境下において土壌中のNH4+生成は主に降雪前に生じ、NO3-生成は積雪後期から融雪期に進行することが示された。また積雪量の減少および凍結融解の増幅に伴って、土壌の正味無機化量は増加し、正味硝化量は減少することが明らかとなった。これは積雪量減少により融雪期に土壌の凍結融解が生じ、DOC/DON比の高い新鮮な有機物が放出されて基質となることで正味無機化量が増加することや、積雪量の減少に伴い融雪水量が減少することで正味硝化量が減少することによるものと考えられた。