ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-145
*荒井見和,金子信博(横浜国大院・環境情報),陀安一郎(京大・生態研),小松崎将一(茨城大・農)
ミミズは土壌構造や物質循環速度の変化を通して植物や微生物活性,有機物分解に影響を及ぼす生態系改変者とされる.ミミズの糞に由来する団粒は炭素動態に影響することから,土壌生態系における炭素循環を考える上でも重要な生物である.一方,地球温暖化軽減策として,農地管理による土壌の炭素貯留が注目されている.本研究で着目した不耕起栽培は,大型機械による土壌への負荷が生じないため,ミミズの個体数・バイオマス量が多くなり,ミミズの糞に由来する団粒が長期間保存される.したがって,土壌撹乱が少ない圃場では,ミミズが土壌の炭素貯留に与える影響が大きくなると予想される.そこで不耕起栽培圃場におけるミミズの土壌改変が,土壌の炭素貯留にどのような影響を与えるのかを把握することを目的として,2007〜2009年にミミズ導入試験を行った茨城大学農学部附属FSCの不耕起・カバ-クロップ圃場(FSC)と,10年以上不耕起,農薬・化学肥料の不使用,稲藁マルチなどの営農管理を行っている圃場(NF)を対象として調査を行った.両調査地において土壌の粒径サイズに着目して,放射性炭素同位体(Δ14C)分析,耐水性団粒解析,二酸化炭素放出量の測定を行った.Δ14C分析結果から,ミミズの摂食・排糞による土壌炭素量の寄与を推定し,ミミズが細土(<1 mm)と植物残さを混食することにより,排出された糞が新しい炭素を含む粗大団粒(>1 mm)として蓄積する可能性が示唆された.また,ミミズの活動影響下で,土壌の安定性を示す耐水性団粒は2 mm以上の画分が増加し,炭素無機化率は微小団粒(<1 mm)で抑制された.よって,ミミズが多くなる不耕起栽培下では,団粒の物理的安定性の向上と,微小団粒(<1 mm)で微生物による有機物分解の抑制が生じたため,土壌炭素が蓄積されていくと考えた.