ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-147
*藤林恵,慎祐?,長濱祐美,中野和典,西村修 (東北大学大学院)
宮城県栗原市の溜め池に優占する巻貝オオタニシおよび二枚貝イシガイの餌源を脂肪酸および安定同位体比を指標として解析した。オオタニシ,イシガイの他に潜在餌源として底泥,懸濁物質,オオタニシの殻上に発達している付着藻類(以下、殻付着藻類)を採集し,それぞれ脂肪酸組成と炭素?窒素安定同位体比を分析した。オオタニシ体内からは緑藻・藍藻由来の脂肪酸がもっとも多く検出され(全体の脂肪酸の15.2%),珪藻や細菌に由来する脂肪酸の含有量は相対的に小さかった(3.0%,4.2%)。イシガイにおいてもオオタニシ同様に緑藻・藍藻由来の脂肪酸を最も多く含んでいた(7.2%)。また珪藻および細菌に由来する脂肪酸含有率はそれぞれ6.3%,5.2%であった。一方,安定同位体比はオオタニシ(C: -24.4‰,N: 5.5‰),イシガイ(C: -28.1‰,N: 7.3‰)であり,炭素,窒素ともに有意に値が異なった(p < 0.05)。また潜在餌源についてはそれぞれ底泥(C: -25.6‰, N: 4.0‰),懸濁物質(C: -27.2‰, N: 5.0‰),殻付着藻類(C: -23.2‰, N: 3.6‰)であった。オオタニシの安定同位体比は底泥や殻付着藻類二近く,オオタニシは底泥や殻付着藻類から緑藻・藍藻を同化していると考えられた。またイシガイにおいては懸濁物質から緑藻・藍藻を同化していることが考えられた。両種とも緑藻・藍藻を主に同化するという類似の食性を有していることが示唆されたが,オオタニシは底泥と殻付着藻類,イシガイは懸濁物質から餌を取り入れており,このことが本調査池において両種が優占的に生息している一因になっていると考えられた。