ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-149
*竹内史子,大瀧みちる,露崎史朗(北大院環境)
リタ-分解過程は主に微生物分解や物理的破砕、光分解によって制御されているため、温度や養分・水・光などの環境要因に制約される。特に、植生の変化は供給リタ-の成分や量を決定し、また、植生の発達による被陰の増加・温度の安定化・乾燥の軽減を生じさせるため、分解速度に大きな影響を与える。そこで本研究では、環境変動の大きい遷移初期に着目し、植生変化にともなう初期侵入種のミカヅキグサ、ヌマガヤ2種のリタ-分解速度の変化と、主に微生物群集との関連性を明らかにすることを目的とした。
調査は北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地の裸地、ミカヅキグサ優占地、ヌマガヤ優占地において行った。各サイトにミカヅキグサ、ヌマガヤのリタ-バックを設置し、経時変化によるリタ-分解率およびリン脂質脂肪酸、リン脂質量、リタ-成分(C, N, P,δ13C,δ15N)、環境要因(地温、照度、土壌含水率)の測定を行った。
リタ-分解速度は裸地で遅く、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイト間では差がなく2年半で30%程度の分解が認められた。したがって、リタ-分解速度はリタ-の種差よりもむしろ周囲の環境(特に植被の有無)により規定されていると考えられた。微生物量はヌマガヤサイトで高かった。一方、微生物種はサイト間よりもリタ-種間で差が見られた。また、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイトではともに分解率とNおよびP含有率には正の相関が認められ、特にヌマガヤサイトでは分解にともないPの蓄積が高くなることが示された。以上からミカヅキグサ・ヌマガヤサイトでは分解速度に差はないものの、微生物分解過程が異なることが示唆された。