ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-159
*臼井伸章・米田聡美(京大院・農)・福島慶太郎・徳地直子(京大・フィ-ルド研)・尾坂兼一(滋賀県大・環境科学)
近年モウソウチクの里山地域への拡大が数多く報告されている。モウソウチクは地下茎によるクロ-ン繁殖・長い開花周期など、里山を構成する木本樹種とは大きく異なる生活史をもつ。そのため、近隣の森林へのモウソウチクの侵入に伴う植生の単一化が森林生態系の窒素の動態に大きな影響を与えると考えられる。本研究は京都府と大阪府境界に位置する天王山において、モウソウチク林BFとコナラが優先する広葉樹二次林SFを調査地に設定した。植物体窒素現存量の算出には、モウソウチクや広葉樹のアロメトリ-式からバイオマスを推定し、各器官に窒素濃度を掛け合わせた。土壌中の窒素動態の把握には、有機物層(Oe+Oa)と鉱質土壌層0?10cmの無機態窒素現存量、純窒素無機化・硝化速度、15N同位体希釈法による総窒素無機化・硝化速度、微生物現存量の推定を行った。土壌の全窒素蓄積量は細土率に採取した土壌の各層の窒素濃度を掛け合わせ算出した。
植物体の窒素現存量はBFとSFで同程度であった。土壌の全窒素蓄積量、無機態及び微生物窒素現存量はBFで高かった。有機物層の無機化に関して純速度はBFで、総速度はSFでより高い傾向を示した。SFではNH4+-N消費速度が高く、生成されるNH4+-Nの大部分が不動化されていた。有機物層の硝化速度は純・総速度ともにBFで高く、鉱質土壌層でBFの純速度は負の値、NO3--N消費速度もBFで高かった。以上の結果から、 モウソウチク林では鉱質土壌層で窒素の不動化が卓越することが示された。すなわち、森林生態系へのモウソウチクの侵入によって効率的に窒素が蓄積され、系外への窒素の流出抑制に寄与すると考えられる。