ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-162
(*)鈴木悠介(名大院・生命農),竹中千里(名大院・生命農),坪田博美(広大院・理)
銅(Cu)などの重金属は生体内蓄積による毒性が知られ、重金属汚染地への浄化対策が求められている。本問題への有望な対策として、植物を用いた環境浄化技術であるファイトレメディエ-ションがある。この技術開発は汚染土壌への適用が主流である一方、鉱山跡地からは水に溶脱した重金属が低濃度ながら流出し続けている(田崎, 1998)ため、水圏に適用しうる技術開発も必要である。コケ植物には重金属を高濃度蓄積する種が知られ、発表者らは数地点でコケ植物の探索を行い、従来から知られるホンモンジゴケ(S.cataractae)以外に、アオハイゴケ(R.riparioides)など数種におけるCu、鉛(Pb)の高濃度蓄積を報告した(鈴木ら, 2010)。本発表ではコケ植物の重金属蓄積メカニズム解明への第一ステップとして、植物体中の元素濃度の相関性に着目し、解析・考察を行なった。
調査は鉱山跡地など計7地点で行い、水試料とコケ植物を採取した。水試料は水温、EC、pH、溶存元素濃度(ICP)を測定し、コケ試料は洗浄・乾燥後、硝酸分解を行い、元素分析(ICP)を行った。元素分析の結果より、採取したコケ全体でCdとZn濃度間には正の相関関係が認められ、CdとPb濃度間には相関性が認められなかった。一方、CdとPb濃度はコケの種により異なる相関を示していた。また、これらのコケ植物を重金属溶液を循環させながら育成する実験を行なった。実験は自然光の温室内で行ない、Cu1 ppm区、Cu10 ppm区および対照区の3処理区を設定し、2週間処理を行った。本発表では本実験の結果についても報告する。
【引用文献】
鈴木悠介・竹中千里・坪田博美(2010).第57回日本生態学会大会講演要旨集:470.
田崎和江(1998).地質学論集.49:137-147.