ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-163
*伊藤尚子,佐々木晶子,中坪孝之,(広島大・院・生物圏)
河口干潟では、藻類などによる一次生産が活発だけでなく、河川から陸由来の有機物が流入するため、高い生産性が維持されている。本研究では、河口干潟に陸から供給される有機物の一つとして落葉に着目し、底生生物にどのように利用されているかを明らかにすることを目的とした。
調査は広島県呉市の黒瀬川河口干潟で行った。落葉を利用する底生生物の有無を明らかにするため、底生生物が侵入できるよう処理をしたメッシュバッグにヨシの落葉を入れ、干潟に設置した。2週間後に回収し、メッシュバッグに出現した生物のタイプと個体数と重量をそれぞれ調べた。その結果、代表的な出現生物として甲殻類(カニ、ヤドカリ類)、巻貝類(ウミニナ類)が確認できた。確認された生物には、メッシュバッグ内に多く出現するものと、外に多く出現するものがあり、生物タイプによって出現パタ-ンが異なる傾向が認められた。これらの生物は、落葉を生育場所として利用している可能性と、餌として利用している可能性が考えられる。そこで、野外調査で確認された底生生物が落葉を餌として利用しているのかを調べるため、摂食実験を行った。対象とする生物にヨシの落葉を一定量与え、人工気象器内で飼育し、葉面積や重量などの変化を3-7日おきに調べた。発表では、これらの結果を踏まえ、河口干潟における、底生生物による落葉の利用の仕方について考察する。