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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-171

ニッチ構造をもつ群集の中立的な相対種個体数分布パタン

*竹内やよい, 印南秀樹 (総研大・先導科学)


群集の種組成や個体数は、決定論的もしくは確率論的な過程で説明されてきた。特に、確率論的なHubbellの中立説は、種多様性の高い熱帯林などの群集で当てはまりがよいことが示され、帰無仮説としても広く用いられている。しかし、中立モデルのパラメ-タを設定することによって、中立ではない群集でもこのモデルがよく当てはまる可能性がある。そこでこの研究では、群集の相対種個体数分布の指標を用いて中立モデルの検定力を分析した。

まず、中立モデルにニッチを組み込んだモデル(ニッチモデル)を作り、シミュレ-ションにより相対種個体数分布を求めた。このニッチモデルでは、群集におけるニッチの占める割合Pとニッチの数Nをパラメ-タとして設定した。各シミュレ-ションの結果を、中立モデル、対数級数モデル、対数正規モデル、ニッチモデルに当てはめ、AICによって最適なモデルを選択した。

シミュレ-ションの結果、ニッチ構造がある群集では、種多様性が減少することが予測された。特に、Pが大きくなるほど種多様性が大幅に減少するが、Nが大きくなると多様性が増加した。またPもしくはNが大きい群集では相対種個体数分布は中立モデルで予測される分布に類似した。

つまり、ニッチ構造をもつ群集でも中立モデルがよく当てはまるケ-スが存在し、中立モデルが最適なモデルと選択されても群集が確率論的な過程に従っているとはいえない。このことは、中立モデルが複雑なニッチ構造をもつと考えられている熱帯林の群集によく当てはまることに矛盾しない。また、群集構造における確率論的、決定論的な過程を検定するためのアプロ-チについても議論する。


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