ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-182
*小川みふゆ(森林総研),山浦悠一(北大・農), 阿部真(森林総研), 星野大介(森林総研東北), 星崎和彦(秋田大県立大), 飯田滋生(森林総研北海道), 勝木俊雄, 正木隆(森林総研), 新山馨(森林総研東北),齊藤哲, 酒井武, 杉田久志(森林総研), 田内裕之(森林総研四国), 天野達也(農環研), 滝久智,岡部貴美子(森林総研)
全国11か所の成熟した天然林に設置された長期モニタリングサイトにおける樹木個体群(52科192種)の変化を解析した。1990年代から2000年代にかけての各種の幹本数(≒個体数)と胸高断面積合計(≒バイオマス)の変化率を各サイトでまず求めた。次に、幾何平均を用いて各種の全国レベルでの変化を求め、この値を用いてさらに1)全種の平均的な変化、2)各科の平均的な変化を求めた。
全種を通して、幹本数が減少する一方で、胸高断面積合計には変化がなかった。科レベルでは、種数の多い科(カエデ科、バラ科、カバノキ科、マツ科、ブナ科)では幹本数と胸高断面積合計ともに大きな変化がみられなかった。種数の少ない科では、アワブキ科とヤブコウジ科の胸高断面積が増加する一方でマンサク科とマメ科では減少したように、科によって変化傾向は異なった。
カエデ科が幹本数と胸高断面積合計に変化がなかったのは、幹本数と胸高断面積合計が減少した種(ウリハダカエデ、アサノハカエデ、テツカエデ)と増加した種(コミネカエデ、ヒナウチワカエデ)、変化していない種(イタヤカエデ、コハウチワカエデ)が混在した結果だった。一方ブナ科では、スダジイの増加とツクハネガシの減少を除くと、その他の種にほとんど変化がなかった。科内の構成種間で変化傾向が必ずしも一致ないことから、種間の変化をグル-プ化するためには、系統関係に基づいたグル-プ化だけではなく、種特性に基づいたグル-プ化(たとえば遷移初期種、後期種といった遷移系列ごとのグル-プ化)が有効だと考えられた。