ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-187
*吉竹晋平(早稲田大・院・先進理工),藤吉正明(東海大・教養),中坪孝之(広島大・院・生物圏),増沢武弘(静岡大・理),小泉博(早稲田大・教育)
富士山の南東斜面では、火山噴火後の一次遷移に沿って植生がパッチ状に生育してできる島状群落を見ることができる。これまでの研究で、遷移初期では土壌微生物のバイオマスや呼吸活性が非常に低いことが明らかになっている。本研究は微生物群集に対する制限要因の1つとして基質制限に着目し、添加実験を通してその有無・程度を明らかにすることを目的とした。
2009年10月に、富士山南東斜面の島状群落間の裸地(遷移初期)およびそのエリアに隣接するカラマツ林(遷移後期)から鉱質土層を採取した。実験室内で3種の炭素源(グルコ-ス・セルロ-ス・リグニン)と窒素源(硝酸アンモニウム)および窒素源(リン酸二水素カリウム)を単独あるいは混合して土壌に添加し、赤外線分析計を用いた通気法によって呼吸速度(二酸化炭素放出速度)を測定した。
遷移初期土壌においては、どの基質でも単独添加では呼吸速度の増加は認められなかったが、炭素源と窒素源の同時添加で呼吸速度が増加した。また、さらにリン源を加えることでその増加量は大きくなった。遷移後期土壌においても同様の傾向が見られたが、炭素源の単独添加でも呼吸速度の増加が認められた。以上の結果から、遷移初期においては炭素源と窒素源の同時不足が土壌微生物群集の一次的な制限要因であったが、遷移後期においては炭素源の不足が重要な制限要因であることが示された。また、いずれの土壌においても炭素源の種類が異なると呼吸速度の増加量に違いが見られ、炭素源・窒素源・リン源添加区における土壌呼吸速度の増加量は、グルコ-ス>リグニン>セルロ-スの順で大きかった。このことから、炭素源の量に加えて質の違いが微生物群集の呼吸活性に大きく影響していることが示唆された。