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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-219

精度か? スピ-ドか? ― マルハナバチの空間移動におけるトレ-ドオフと学習環境の関係

*大橋一晴(筑波大・生命環境科学), Thomson, J.D.(トロント大学生態進化生物学科)


多くの動物は、散在するパッチのあいだを移動しながら餌をあつめる際、しばしば環状のル-ト「トラップライン」を巡回することで収穫効率を高めようとする。演者らはこれまでの研究で、花蜜をあつめるマルハナバチが、個々の植物個体(株=パッチ)の位置をおぼえてトラップラインをたどる能力をもつものの、隣接する株をむすぶル-トがジグザグを描くような配置では、短距離の移動にたいする生まれつきの好みにじゃまされ、いくら経験を積んでもトラップラインをつくれないことを発見した。では、実際にこうした「あつかいにくい」配置に出くわしたとき、ハチはどのように対処するのだろうか?また、このような配置でも、ランドマ-ク(目印)がたくさんあれば、ハチはトラップラインをたどることができるのだろうか?

上記の疑問に答えるため、マルハナバチを用いた室内実験をおこなったところ、あつかいにくい配置では、ハチはトラップライン行動をあきらめ、代わりに株間をすばやく移動して収穫効率を高めようとすることがわかった。また、こうした配置ではランドマ-クを足してもハチはトラップラインをたどるようにはならず、代わりにスピ-ドを高める戦術への転換を早めるようになった。また、ランドマ-クが少ないときにくらべ、ハチはたとえトラップライン行動をあきらめた後でも、低いスピ-ドしか達成できないことがわかった。これらの結果は、動物の空間移動には「精度とスピ-ドのトレ-ドオフ」が存在すること、また、ランドマ-クの増加は配置のすみやかな把握には役立つものの、そのあつかいにくさを相殺するほどの効果はもたず、むしろ記憶の呼び出しや視界との照合にかかる手間をふやしてしまうことなどを示唆する。


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