ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-233
後藤優介(立山カルデラ博),有本勲(農工大・農),古林賢恒(元農工大・農)
富山県東部に位置する立山カルデラ周辺において2頭のツキノワグマ(メス成獣・TF80およびオス成獣・TM38)に、activity sensor付きGPS首輪(デ-タ蓄積型、Lotek社GPS3300s)を装着した。測位間隔は5分とし、追跡期間はTF80、TM38それぞれ2004年10月15日-31日(17日間)、2005年9月16日-26日(11日間)である。首輪の回収後、得られた測位デ-タはactivity sensorの値をもとに、1日の中での活動コアおよび休息コアを抽出することが可能であり、抽出されたそれぞれの地点で現地踏査を行った。現地踏査により得られたツキノワグマの休息利用場所の特徴、および休息地点で回収することできた糞の分析等から、GPS首輪デ-タと現地踏査を組み合わせることによる食性解析の有効性について検討を行った。
結果、TF80については活動・休息ともに草地群落を利用し、一方TM38は活動時と休息時において利用環境は異なっていたが、両個体とも休息場所で採取した糞の分析により活動地点における採食活動を再現することが可能であった。以上のことから、GPS首輪により得られたデ-タをもとに休息場所を回ることで、効率よく糞を採取し、日単位での食性を解析することが可能であることが示唆された。このことはこれまで測位点の植生情報や行動圏における糞分析の結果などに頼りがちであったツキノワグマの生息地利用について明確に評価することを可能とする。しかしながら、本研究は秋期に実施されているが、季節によって採食物の量的・質的変化に伴う脱糞量・回数の変化することや、糞虫や菌類などの糞分解者の活動量の違いにより糞の消失スピ-ドが変化すること等が考えられる。これらは現地踏査時の糞の発見率に大きく影響を与えることになり、今後、季節を変えての検討が必要である。