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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-252

カシノナガキクイムシ穿孔木の枯死確率は空間的に不均一

*山崎理正,小田崇(京大院・農),伊東康人(兵庫農技総セ),安藤信(京大フィ-ルド科学セ)


ブナ科樹木の集団枯死(ナラ枯れ)を引き起こすカシノナガキクイムシ Platypus quercivorusに飛来穿孔された際に,生残する個体と枯死する個体がある。カシノナガキクイムシは集合フェロモンによって同種他個体を誘引し,マスアタックによって樹木を枯死させるので,穿孔木が枯死する確率は一旦飛来穿孔が始まった後マスアタックに至る確率と読み替えることができる。どのような個体が飛来穿孔を受けるのかについては,先行研究によって太い個体が好まれる傾向などが明らかにされているが,その後マスアタックに至るかどうかは別の過程で,要因も異なる可能性がある。本研究では穿孔木の枯死確率に影響を及ぼす要因を探索した。

調査は,2008年に初めてナラ枯れ被害が確認された京都府東部の二次林で,2009年春と2010年春に行った。ミズナラとクリが優占する調査区90haを踏査して,各年に前年の穿孔木を探索してその個体特性と立地環境を測定した。穿孔木の生死を応答変数とした一般化加法モデルを構築したところ,樹種ではクリよりもミズナラの方が枯死確率が高く,マスアタックに至る確率はミズナラの方が高いことが示された。個体サイズは説明変数として採択されず,太い個体が好まれるのは最初に飛来穿孔対象を選択する段階で,その後どの個体でマスアタックが起こるかについては個体サイズは影響を及ぼしていないと考えられた。検討した立地環境の中では斜面傾斜角と横断曲率が負の影響を及ぼしており,傾斜の緩い谷部で枯死確率が高くなる傾向が明らかとなった。また,枯死確率が高くなるホットスポットが2008年と2009年では異なった場所に検出され,カシノナガキクイムシの調査地への飛来侵入経路とその後の移動分散方向が示唆された。


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