ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-262
*田部慧(北大・理), 石川由希(北大・環境科学),北條賢(北大・環境科学,琉大・農),三浦徹(北大・環境科学)
シロアリは分業を行い、高度に発達した社会を築いている。社会を成立させる上では、カ-ストごとの行動特性に加え、それぞれのカ-ストの行動が周囲の環境により変化することも重要である。我々はオオシロアリHodotermopsis sjostedtiの行動解析をする過程で、ワ-カ-の攻撃性にそうした可塑性が見られることを発見した。ワ-カ-の攻撃性は、兵隊の存在下で抑制され、生殖虫の存在下で促進された。つまり、ワ-カ-の攻撃性は周囲の環境によって変化し、ワ-カ-もコロニ-防衛の一端を担うのである。そうした行動の可塑性がコロニ-の生産性を高めていると考えられる。では、この他個体の効果はどの程度の時間維持されるのだろうか?また、他個体の存在以外に攻撃性を変化させる要因はないのだろうか?
本研究では、他個体の効果の持続性を調べるために、ワ-カ-に他個体を一定期間随伴させ、その個体を取り除いた後のワ-カ-の攻撃性を調べた。すると他個体の効果は、その個体がいなくなった後もしばらく持続した。これは他カ-ストと随伴した「経験」そのものがワ-カ-の攻撃性に影響を与えることを示唆している。また、攻撃性を変化させる別の要因として、攻撃経験に着目し、攻撃性を測る前にアリへの攻撃を経験させてから攻撃性を調べた。しかし、アリへの攻撃経験の有無では,攻撃性の有意な変化は認められなかった。本発表では、生体アミンや幼若ホルモンなど攻撃性に関与すると予想される生理メカニズムに関しての結果も併せて報告し、行動の可塑性とカ-スト分化機構との関連についても考察したい。