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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-264

健全なカワシンジュガイ個体群と生息適地の解明

*照井慧(東大院・農),宮崎佑介(東大院・農),松崎慎一郎(国環研),鷲谷いづみ(東大院・農)


日本産イシガイ類のうち、冷水の流水環境に生息するカワシンジュガイ(Margaritifera laevis, 北海道と本州に分布)は、生息数および生息域を著しく減少させつつあり、2007年度版環境省レッドリストでは絶滅危惧II類に指定されている。しかし、これまでのカワシンジュガイに関する研究では、主として生理的特性や分類に焦点が当てられており、その生息に必要とされる環境条件など、保全の実践を導くための知見が不足している。

本研究では、現在でもカワシンジュガイの生息にとって良好な環境が保たれていると考えられる北海道朱太川水系において、27地点(324コドラ-ト:0.5 × 0.5 m) のカワシンジュガイの密度と殻長、および環境要因を調査し、生息状況を詳細に把握するとともに、カワシンジュガイの局所密度に影響する物理化学的要因を分析した。地点により顕著な違いはあるものの、様々な殻長の個体が採集され、稚貝の割合が比較的高いことから、現在でも順調に更新が行われていると推測された。一般化線形混合モデルによる解析では、カワシンジュガイの局所密度に対するDO・底質・水深・流速の有意な正の効果が認められた。なお、底質・水深・流速に関しては2次項も有意な効果を示した。カワシンジュガイの密度は、よりDOが高く、砂の割合が20 ~ 30 %、水深が0.2 ~ 0.5 m、流速が0.05 ~ 0.20 s / mのところで特に高かった。このようなカワシンジュガイにとって好適な物理的環境は、河川中心部に比べて川岸近くに偏って存在しており、同種の河川横断方向の分布には、それに対応した偏在が認められた。今後、河岸改修などの河川工事は、物理的環境の改変を通して、カワシンジュガイ個体群に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。


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