ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-265
*池田昌史,野口亮太,倉園知広,北川忠生(近大・農),加納義彦(NPO高安研究会)・高田啓介(信大・理)
ニッポンバラタナゴRhodeus ocellatus kurumeusは,コイ科タナゴ亜科に属する日本固有亜種である.本種は,外来別亜種であるタイリクバラタナゴR. o. ocellatusとの交雑・競合により激減し,環境省RLでは絶滅危惧IA類に指定されている.2005年に奈良公園内の1つの池から新たな集団が発見されたが,近年,個体数の減少が著しく,早急な保護が必要とされている.この奈良集団では,以前に高感度な遺伝マ-カ-であるマイクロサテライト(MS)分析が行われたが集団中には多型がなく,遺伝的均質化の進行が懸念されていた.また,奈良集団は大阪集団と近縁で,ほとんどのMS対立遺伝子やmtDNA型を共有しており両集団の個体を個体レベルでは識別することができなかった.そこで本研究では,AFLP分析を行い奈良集団内の遺伝的多様性の把握,および大阪集団との比較を行った.
材料として,奈良の10個体と八尾の4個体を用いた.MseIとEcoRIによる消化,アダプタ-の結合,各アダプタ-配列+1塩基付加の一次増幅の後,各アダプタ-プライマ-にさらに2塩基を付加した18通りのプライマ-セットについて,少数個体によるテストを行い,その結果からそれぞれMse I-CAT ,CAG,CTCとEco RI-AAC,ACG,ACAの3通りのプライマ-セットを選んで全個体の比較を行なった.
50-500 bpの区間に検出されたフラグメントを比較に用いた結果,奈良集団において比較的多くの多型が検出され,各プライマ-セットの単独の結果から,すべての個体を識別することが可能であった.また,奈良集団,大阪集団それぞれに固有なフラグメントが検出された.これにより個体レベルでの集団の識別が可能と考えられる.