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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-267

長野県上伊那地域における水田雑草の指標性を利用した環境評価の試み

*松下遼太,大石善隆,大窪久美子(信州大・農)


水田環境は多くの生物が生息,生育しており,水生動植物に適した生育環境を提供している.しかし,圃場整備による乾田化や農薬などが普及したことで水田環境は大きく変化し,種の減少や絶滅が危惧されている.そこで本研究では,こうした水田環境の変化が生物に与える影響を把握するために,水田環境のモニタリングに適した種の抽出を行い,水田雑草を環境指標生物として利用できるかを検証した.

調査対象種は,ウキゴケ,イチョウウキゴケ,ウキクサ,アオウキクサ,シャジクモ類,アオミドロ類の6種とした.これらは環境変化や農薬などの影響を受けやすい種とされており,ウキゴケ,イチョウウキゴケは環境省のRDBカテゴリで準絶滅危惧(NT),シャジクモ類は絶滅危惧?類(CR+EN)に指定されている.

調査地は市街化(市街/中山間地区)・圃場整備(整備/未整備)の程度が異なる長野県上伊那地域の4タイプ5つの水田地域とし,各調査地において調査対象種の分布傾向,水質,土地利用条件,および管理状況を調査した.各調査地の水田は約50筆〜80筆であった.

調査の結果,アオウキクサ,ウキクサ,アオミドロ類,シャジクモ類は全調査地で出現した.その一方,イチョウウキゴケは市街地の調査地で主に出現し,ウキゴケは中山間・未整備の調査地でのみ出現した.さらに,ウキゴケは林縁に近い場所に位置する水田に多く生育する傾向も明らかになった.そこで,これらの種の分布と水田管理状況との関係を考察したが,イチョウウキゴケ,ウキゴケは出現数が少なく,明確な関連性はみられなかった.

以上の結果より,市街化・圃場整備の程度はイチョウウキゴケ,ウキゴケの分布に影響を及ぼし,特に,ウキゴケについては周囲の土地利用条件も関連することが推察された.


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