ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-285
*正田惇(農工大院・農),千賀裕太郎(農工大・農)
河川源流域は、陸域生態系と水域生態系が相互に作用する空間であり、そこに生息する冷水性魚類は、河畔域における植生改変や集水域における土地利用形態の変遷による影響を受けやすいことが知られている。一方、源流域は陸域の環境改変がもたらす影響だけでなく、河川工作物の設置によって下流と隔離され易いため、個体群サイズ、遺伝的劣化に伴い局所的絶滅が生じやすいことも指摘されている。
ホトケドジョウは、低・中標高流域の最上流部で、且つ多様なパッチが近接する谷津地形を主なハビタットとする小型の冷水性底生魚類であり、谷津の代表種とされている。しかし現在では、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧IB類に指定されるほどまでに激減している。
そこで本研究では、ホトケドジョウ個体群の存続に影響を与える要因を解明することを目的とした。調査は、多摩丘陵の多摩川水系の支流域に属する複数の谷津を対象に行なった。本種の在不在を応答変数、斜面樹林や水田などの河畔環境及び集水域における土地利用、底質や護岸状況などの水路内環境、さらに小集団化をさせる要因としてのハビタットサイズや堰堤を説面変数とする統計モデルの構築を行い、対応関係があるのか明らかにした。
特に今回はこれまで検討されてなかった河畔植生が及ぼす影響について考察した。