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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-286

混生地における下刈りがギフチョウ属2種の産卵行動に及ぼす効果

*安齋和樹,佐藤衣里,林田光祐(山形大・農)


ギフチョウ(以下:ギフ)とヒメギフチョウ(以下:ヒメ)は里山を代表する昆虫であるが、環境省RDBに掲載されるほどの希少な種となり、全国各地で下刈り等の保全活動が行われている。特に両種の混生地は数少なく、貴重な存在となっている。本研究では両種の具体的な保全方法を検討するため、混生地において両種が選択する産卵環境を下層植生と食草密度に着目して明らかにし、下刈りが両種の産卵環境選択に与える影響を明らかにすることを目的とした。

混生地の一つである山形県鮭川村において、異所的に2種が生息する場所を調査地とした。調査区は16m2の方形区を12区ずつ(2010年のギフ生息地のみ10区)とし、下層植生として草本層(高さ1m未満)と低木層(高さ1-4m)の被度・密度を測定した区を2009年に設定し、春に食草の密度と両種の成虫の飛来数と産卵数を調査した。その後、下刈りをおこない、草本層と低木層を下刈り後の疎と下刈りなしの密にわけて組み合わせた区を2010年に設定し、春に2009年と同様の調査をおこなった。

全調査区でギフ、ヒメの飛来数・産卵数は2009年にそれぞれ25頭・60卵、29頭・138卵、2010年にそれぞれ100頭・133卵、50頭・114卵確認された。2009年はヒメの産卵行動が下層植生と食草密度に制限されているという傾向がみられたが、ギフにはみられなかった。さらに、下層植生がヒメの食草密度に負の影響を与えていることが示唆されたため、ヒメは下層植生に直接的、間接的に影響を受けていると考えられた。2010年は両種ともに下刈りの有無で飛来数、卵数に有意な差はみられず、物理的障害の影響は明確には認められなかったが、両種の産卵行動は食草密度に制限されていると推察された。以上より、ギフよりもヒメの産卵行動の方が下層植生や食草密度に対して敏感であると考えられ、両種ともに下刈りの効果は長期的に評価すべきと考えられた。


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