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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-289

イヌワシの保全を目的とした列状間伐地の植生遷移に草食動物の採食と光環境が及ぼす影響

*齋藤倫実,林田光祐(山形大・農)


イヌワシの採餌環境創出を目的とした列状間伐地には主要な餌動物のノウサギが誘引されるが、誘引効果は経年的に低下することが指摘されている。誘引効果を持続させるには列状間伐後の植生遷移とそれに影響を与える要因を把握し、誘引効果の高い植生が維持されるような工夫が必要である。本研究では列状間伐後の植生遷移と間伐地を利用する草食動物の餌植物の選択性を明らかにし、伐採列内の位置による光環境と草食動物の採食が植生遷移に与える影響を検討する。

山形県鳥海山山麓で2005、2007、2009年に幅10m程度(2005年は22m)で列状間伐されたスギ人工林において、伐採列を横断する帯状区を設定し2m四方の方形区に区切った。2009年と2010年に調査区内の全植物を対象にした植生調査と樹高10cm以上の木本にみられた草食動物による食痕の直径の測定を行い、間伐後1年目から5年目までの変化を推測した。また樹高10cm以上の木本の根元直径と方形区内の光量子束密度、主要植物の窒素含有量の測定を行った。

間伐後1年目は植生への光の影響は小さかったが、相対光量子束密度が高い伐採列中央部では2年目にミズキやリョウブ等の萌芽更新種が優占し、3年目以降はタラノキやクマイチゴ等の実生更新種が優占した。一方、相対光量子束密度が低い林縁部では2年目以降オオカメノキやヒメアオキ等が優占した。ノウサギとカモシカによる食痕は、間伐後1年目は根元断面積が多いオオバクロモジやヒメアオキのほか窒素含有率が高いヤマグワやタラノキに集中した。2年目以降は一部の種を除くと根元断面積が多い種ほど食痕断面積が多くなる傾向が見られた。食痕断面積と根元断面積や窒素含有率との関係から導かれる餌植物としての選ばれ方および被度の経年変化を種別に解析し、植生遷移が光や採食圧からどの程度影響を受けているのかを考察する。


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