ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-290
藤巻亮,荒巻淑恵,柚原剛,杉原奈央子,風呂田利夫
東京湾最奥部に位置する谷津干潟は2つの水路によって東京湾と繋がるほかは周囲を埋立地に囲まれた閉鎖的な干潟である.本干潟は多くの野鳥が訪れることからラムサ-ル条約に登録されているが,その一方で近年は外来二枚貝ホンビノスガイや腹足類ホソウミニナの大量増殖,また大型緑藻類アオサによる干潟面の被覆などを始めとして保全上の問題が多く発生している.この干潟で2010年7月下旬にベントスの大量斃死ならびに干潟面に堆積していたアオサ類の消滅,干潟底層水の温度上昇が確認されたため,斃死発生後のベントス生息状況を確認する目的で定量調査を行った.
マクロベントスを対象とした調査は斃死確認の翌日(7月29日)とその約1ヶ月後(8月23日)に行い,7月下旬の調査では4測点で50cm×50cm方形枠(深度20cm)内の底質を採取し1mm目のふるいに残った生物を確認した.また8月下旬の調査では7月での測点のうち3測点にて方形枠を3つ設定し,同様の方法で生物を確認した.
7月の定量調査では合計1?の方形枠から8種385個体の生息が確認されたが,個体数の大半をホソウミニナ(64%)とホンビノス(28%)が占め,鳥類の主要な餌資源と考えられる多毛類の確認はミズヒキゴカイ2個体のみであった.また底質の酸化還元電位(Eh)は表層においても-176mVを記録するなど著しい還元状態を示したことから,ベントスの斃死要因としてアオサ類の腐敗による干潟表層の嫌気化が大きく考えられた.
発表では斃死から1ヶ月後に行われた定量調査の結果から,大量斃死発生後の谷津干潟におけるマクロベントスの生息状況について報告する.