ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-297
酒井すみれ(東大・農・生物多様性) 百瀬浩(中央農研・鳥獣害研) 樋口広芳(東大・農・生物多様性)
里山に生息する多様なカエル類はヘビやサギ、サシバなどの上位捕食者の主要な食物資源である。近年の農地管理方法の変化により、カエル類の減少が指摘されている。水田と林が入りくんでいる環境では、複数の環境を必要とするカエル類の多いことが予想されるが、景観構造と圃場整備の影響の両方を考慮した研究はほとんどない。本研究ではカエル類の個体数と多様度が、景観要素の組み合わせ、水路の形状、景観要素間のつながりによってどのように影響されているかを明らかにした。
調査地は、栃木県芳賀郡を中心として水田と林の組み合わせが異なる広域を対象とした。各種カエルの幼体を2006年、2007年の6月下旬から7月、7月下旬から8月の2回、各地点約300mセンサスし、2回のうちの最大値を解析に用いた。カエル類各種の相対密度と多様度指数を目的変数として一般化線形混合モデルを用いて解析を行った。説明変数として、水田に隣接する林の有無、水田と林の連結性、水路タイプ、水路の登りやすさ指数を入れたモデルをそれぞれ作成し、どのモデルの説明力が高いか検討した。その結果、トウキョウダルマガエルの個体数は、水田と林の連結性が高いほど多く、水路が登りやすいほど多かった。アカガエルの個体数は水田と林の連結性が高いほど多く、水田の両側に位置する水路が護岸されている場所ほど少なかった。樹上性カエルでは、水田と林の組み合わせが高いほど個体数が多いが、水田と林の連結性が高い場所では個体数が低かった。多様度指数では水田と林の連結性が高いほど値が大きく、多様なカエル類が生息するためには、水田と林の組み合わせがあるだけでなく、その連結性が維持されていることが重要であることがわかった。