ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-304
*立脇隆文,高槻成紀(麻布大・院・獣医)
首都圏の一般道における野生哺乳類のロ-ドキルの実態を広域・詳細の2つの空間スケ-ルから把握し、都市化とロ-ドキルの関係を階層的に解析した。
広域スケ-ルでは神奈川県の市区町村に例をとり、ロ-ドキル頻度(頭/km2)と都市化の関係を調べたところ、ロ-ドキル頻度と都市化の関係は動物種によって異なる傾向を示し、4つのタイプがあった。すなわち、?)ネズミのようにより都市的な環境になるにつれてロ-ドキル頻度が単調に増加する種群、?)タヌキのように森林と都市の中間地域で最も頻度が高くなる種群、?)シカやイノシシのように都市化の程度が低い地域でのみロ-ドキルが生じる種群、?)イタチ類やアライグマのように都市の程度と明瞭な関係がみられなかった種群。
詳細スケ-ルでは神奈川県相模原市と東京都町田市に例をとり、一般道における野生哺乳類のロ-ドキル地点を緑地からの距離を指標として解析したところ、野生哺乳類のロ-ドキルは一般に緑地周辺で多く、動物種によりロ-ドキルが発生する「緑地を中心とした空間」が異なっていた。中型食肉類では緑地の近くでロ-ドキルに遭う順に、アナグマ、アライグマ、タヌキ、ハクビシンであった。
以上の結果から地域スケ-ルで生じる都市化の進行とロ-ドキルの関係には、(1)道路の増加にともなってロ-ドキル数が増加する段階と、(2)主な生息地である緑地の減少とともにロ-ドキル数が減少する段階とがあり、これらは生息地の減少による個体数の増減とともに、緑地周辺の道路の量が関係すると考えた。