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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-306

高山帯に侵入したエゾシカ(Cervus nippon yezoensis)から高山植物を守れるか? ‐夕張岳における植生保護柵設置に関する機能効果とその課題‐

*杉浦晃介(酪農学園大学大学院),坂村武(北海道自然環境課),赤坂猛(酪農学園大・環境),吉田剛司(酪農学園大・環境)


北海道夕張市と南富良野町にまたがる夕張岳(1,668m)において,今年度よりエゾシカによる植生被害防止を目的とした防鹿柵(以下,柵)が設置された.本研究では,被害が顕著な崩壊地植生2地点に設置した柵の効果と問題点,課題について報告する.また,予備調査として自動撮影装置を用いたシカの行動確認の調査についても一部を報告する.

柵は軽量で施工が比較的簡単であり,電気ショックによる心理的ダメ-ジを与えることができる電気牧柵を使用し,2010年8月末から10月までの延べ41日間設置した.設置初期段階では柵は正常に作動しており,エゾシカの侵入を防ぐことができたが,設置から13日後には,強風による支柱の倒伏や電線のよじれ.枯れ穂との接触による漏電等が確認された.これは,エゾシカの電線接触時の突発的破壊を考慮したグラスファイバ-製の支柱が強風で振り子のように動いてしまったためである.これらの故障が断続的に発生したため,エゾシカの柵内への侵入を許してしまい,柵内においてエゾシカの痕跡も確認した.よって今年度は柵の効果について十分な結果を得られなかった.今後の対策として,電線の強度向上や支柱の種類変更,点検回数の再考が検討されている.また,各作業による人間の踏み込みが植生帯に与える影響を考慮して,作業方法の見直しを検討することも不可欠である.

さらに,自動撮影装置を柵周辺に8月から10月までの延べ73日間設置した.その結果,9月から10月にエゾシカが多く撮影され,時間帯が20時-21時に集中しており,希少な高山植物の生育する植生での採食も確認された.補殺等による対策の困難な当地域のような高山帯においては,柵の設置による直接的な保護対策を講じ,今後も継続した課題の整理が必要である.


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