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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-312

トノサマガエルの個体数と遺伝的多様性の減少をもたらす要因

*道本久美子,高見泰興(神戸大・人間発達環境),田中洋之(京都大・霊長研),丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)


農業生産の場である水田は、陸域と水域が隣接する景観であり多くの生物にとって重要な環境である。特に水中と陸地の両方を必要とする両生類の生息地として水田環境の果たす役割は大きい。しかし近年、都市開発にともなって平野部の水田環境の縮小・分断・構造変化が進み、水田に生息する生物の個体数を大きく減少させている。このような都市部における水田環境の変化はカエル類に対しても大きな影響を与えている。なかでも水田への定位性が高いとされているトノサマガエルは、数年前までは普通種であると考えられていたが、全国各地で減少が報告されている。しかし、どのような環境要因の変化がトノサマガエルの減少をもたらしているかについては検討の余地がある。

本研究では、阪神地区の水田23地点でトノサマガエルの個体数を調査した。また各地点で個体を採取し、集団内の遺伝的多様性や集団間の遺伝的分化についてSSRマ-カ-を用いた遺伝解析を行った。そしてGISを用いた調査地周囲や調査地間の最小コストパスの解析、農業活動時期の調査を行い、どのような環境要因がトノサマガエルの個体数と遺伝的多様性に影響を与えているのかを調べた。

その結果、トノサマガエルの個体数は周囲の森林面積が大きな農地で多く、周囲に都市環境が広がる農地で少なくなっていた。生息地周囲の農地面積が広いほど遺伝的多様性が高く維持されていること、農地はトノサマガエルの移動を促し、人工地は移動の障壁となっていることなどが明らかになった。この結果からトノサマガエル集団が健全に存続できる水田環境とは何なのかを検討した。


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