ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-324
*大黒俊哉(東大・農), 角媛梅(東大・農, 雲南師範大), 井上雅文・李召羅(東大・アジア生物資源環境センタ-)
本研究は、生物多様性、食料・バイオマス生産を含む供給サ-ビスおよび調整サ-ビス等の統合的評価に基づき、生物多様性を維持しつつ生物資源の持続的利用を可能とする里山・里地管理基準を土地利用モデルにより定量的に示すことを目指す。
里山・里地の生物多様性評価手法については、日本におけるデ-タベ-スの整備状況から、土地被覆を中心とした生息地情報から評価する方法が妥当と判断された。そこで、多時期の土地利用メッシュデ-タをデ-タベ-スとして整備したうえで、2土地利用間の混在度をあらわすJOIN統計量を指標として、全国スケ-ルでの評価を行った。その際、RuLISの農業生態系区分を用いて、変化の傾向を解析した。その結果、里山・里地のモザイク構造を指標するJOIN(水田?森林JOIN率)は山地・丘陵地景観域の一部および台地・低地域で、都市化・土地改変を指標するJOIN(水田?建蔽地JOIN率)は台地・低地域で、それぞれ高いことが分かった。また、水田?森林JOIN率は減少、水田?建蔽地JOIN率は増加の傾向にあるが、それらの変化率はいずれも都市近郊に位置する景観タイプで最大となっていることが明らかになった。以上のように、JOIN統計量を農業生態系区分ごとに解析することで、空間構造からみた生物多様性の地域特性およびその変動を評価することが可能であることが明らかになった。調整サ-ビスについても、RuLISを活用し、既存モデルを一部改変して農業生態系区分ごとに解析することで、地域特性およびその変動をマルチスケ-ルで評価することが可能であることが示された。