ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-326
*畑 憲治, 郡 麻里(首都大院・理工・生命), 森田沙綾香, 平舘俊太郎(農環研), 可知直毅(首都大院・理工・生命)
海洋島における野生化ヤギ(以下ノヤギ)の排除は、排除に伴う生物間相互作用の変化を介して、その生態系内の物質の収支や循環に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、ノヤギが排除された海洋島である小笠原諸島の媒島(137ha)において、草本植生の地上部バイオマスとそれに含まれる窒素、リンの量と、海鳥の営巣状況、過去の攪乱の程度、現在の種構成との関係を、局所的な空間スケ-ルで解析した。
媒島の北西部を25×25mのメッシュに区切り、その中からランダムに88箇所を選択した。2010年6月に、選択されたメッシュの中心部において 30×30cmの範囲で草本植生の出現種を記載後、地上部を刈り取り、その乾燥重量と窒素、リンの含有量を測定した。また、サンプリング地点の半径5m以内において、海鳥の営巣の有無を確認した。さらに、ノヤギ排除前の航空写真を用いて、サンプリング地点を含むメッシュの植生の状態(森林、草地、裸地、岩場)に区分した。
モデル選択の結果、草本植生の地上部バイオマスのばらつきは、ノヤギ排除前の草本植生の状態を独立変数として含むモデルでよく説明できた。草本植生の地上部に含まれる窒素の含有率のばらつきは、海鳥の営巣の有無を含むモデルでよく説明できた。草本植生の地上部に含まれるリンの含有率のばらつきは、3つの独立変数及びこれらの交互作用を含むモデルよく説明できた。
本研究の結果は、海鳥の営巣、過去の攪乱の程度、現在の種構成が、互いの相互作用を介して、ノヤギ排除後の植生の地上部のバイオマスや栄養塩量に影響を及ぼす可能性があることを示唆する。