ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-332
*山瀬敬太郎,伊東康人(兵庫農技総セ),栃本大介(ひょうご環境創造協会),藤堂千景(兵庫農技総セ)
山地斜面の崩壊は,広がりをもった3次元で発生しているため,水平根を正しく観察し,根系の崩壊防止機能を評価することが重要である(北原2010).間伐は,木材生産だけでなく,森林の有する多面的機能の増進にも効果があるが,その効果を科学的に説明した事例は少なく,崩壊防止機能についても,掘削しなければ観察出来ない調査であるため,その評価は非常に遅れている.本研究では,間伐と崩壊防止機能の関係を解析するため,兵庫県神河町のスギ人工林(1963年植栽)において,1995年10月に実施した間伐区(材積間伐率45.0%)と,それに隣接する無間伐区を設定し,毎木調査と根系調査を実施した.毎木調査は,胸高直径の測定,根系調査は,2008年(間伐後13年目)に間伐区と無間伐区において,立木各5本から等高線方向に1m離れた位置で,土壌断面(幅2m×深さ1m)を掘削し,各断面を10?四方のメッシュに区切り,断面に出現した水平根の分布位置と根系直径を測定した.調査の結果,地上部の胸高直径は,2008年の間伐区で成長が有意に大きかった.一方,地下部の根系本数は,中径根サイズ(0.5-2?)の本数が,間伐区平均20.0本/?,無間伐区平均12.2本/?で有意差がみられたものの,全本数は,261.0本/?(間伐区),234.2本/?(無間伐区)で有意差はみられなかった.また,根系直径との回帰式から求めた引き抜き抵抗力の合計値(崩壊防止力)は,25.3kN/?(間伐区),19.0kN/?(無間伐区)であり,いずれも有意差はみられなかった.以上のことから,間伐区では,地上部の肥大生長とともに,地下部の中径根の本数が多くなっているものの,根系の引き抜き抵抗力の合計で示される崩壊防止力では,明らかな違いはみられなかった.