ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-348
*今藤夏子, 伊藤洋, 竹中明夫 (国立環境研)
都市生態系において都市緑地は大きな役割を果たしていることが予想される。しかし、都市緑地の環境要因と生物相との関係、すなわち、都市緑地周辺の街路樹の種類、建物の高さ、緑地間の距離などの周辺環境要因と、緑地の植物被覆率や植生などの緑地環境要因が生物相に与える影響についての定量的な解析は不足している。
本研究は、生態情報が充実していて観察しやすく、多くの種が植物を利用することから環境を表す指標として用いられるチョウに着目し、東京の緑地およびその周辺の環境要因とチョウ相の関係を解明することを目的とした。東京都心緑地のチョウ相と、各緑地の環境要因の関係について、種数および種多様度を目的変数、緑地の面積や植物被覆率などを説明変数として統計的手法によって解析した。調査対象は、大型緑地8箇所(代々木公園、新宿御苑など、7?124 ha)および、その周辺の小型緑地10箇所(0.2?2.7 ha)とした。大型緑地については調査許可を得た上で2009年春から、小型緑地については2010年春から、毎月決まったル-トを歩き、遭遇したチョウの種と個体数を記録した。また、各緑地およびその周辺の環境要因として、緑地の全体面積、植物被覆率、植生、食草の有無、緑地間距離、等を調査した。
観察されたチョウの総種数は37種で、全緑地で観察されたのはアオスジアゲハ、アゲハ、ヤマトシジミであった。タテハチョウ科、ジャノメチョウ科は、全体的に観察数が少なかった。また、種数や多様度は緑地面積に比例しないことが明らかとなった。例えば、大型公園のうち、58 haの新宿御苑では最多の29種が、59 haの皇居外苑では最少の11種が記録された。一方、小型公園である0.9 haのみなみもと町公園では、12種が記録された。その他、食草の有無とチョウ相についての解析も行った。