ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-349
*大曽根陽子(大妻女子大・社会情報)・清水亜香里(大妻女子大・社会情報)・菊地賢(森林総研)
都市緑地は、植物の少ない都市部において、ヒ-トアイランド現象の緩和、生物多様性の保全などに大きな役割を果たしている。また、京都議定書では温室効果ガスの吸収源として都市緑地が明確に位置付けられている。このように、さまざまな機能・サ-ビスが期待されている都市緑地であるが、一方で都市ならではの大きなストレスにさらされている。とりわけ大きなストレスがかかるのは街路樹であろう。街路樹は道路に近接した狭いスペ-スに植栽されるので、根の発達が妨げられ、水や栄養塩の供給量にも制約がある。このため、乾燥ストレスや窒素ストレスを受けやすいことが予想される。さらに、単木状態で植栽されるので、夏場はアスファルトの輻射熱を全方位から受けることになり、これも乾燥ストレスを増す要因になると考えられる。
本研究では、街路樹として植栽されている樹木が、より自然環境に近い緑地内に生育している樹木に比べて、どれだけストレスを受けているかを調べた。材料には街路樹として一般的なソメイヨシノ、ケヤキ、イチョウを用い、ストレスの指標として、6月から10月の蒸散量、窒素濃度、落葉数を測定した。
道路際では自然緑地内と比べて、土壌水分含量が低く、樹木の幹表面の温度が高かった。樹木の蒸散量は道路際のほうが低く、より強い乾燥ストレスを受けていることがわかった。また、葉の窒素濃度も自然緑地内に比べて道路際で低く、窒素ストレスの影響もあることが示唆された。しかし、予想に反して、10月時点での積算落葉数は道路際のほうが少なく、乾燥ストレスが落葉を促進するわけでなないことが示された。