ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-351
畑田 彩(京都外国語大学)
「生態学」はもはや理系大学・学部だけの科目ではない。環境問題との関わりで、生態系機能や生態系サ-ビスの重要性が認知されるようになってきた昨今では、文系大学・学部でも生態学を扱うことのできる授業科目が増えてきている。昨年のポスタ-発表で、演者は、京都外国語大学で一般教養科目として開講されている「自然を知る」「生命の仕組み」での授業デザインや、専門知識のない学生に生態学を教える方法論を紹介した。
京都外国語大学には、本年度より新学科「国際教養学科」が設置された。「国際的な場面で活躍するリ-ダ-の養成」を目標に掲げる本学科では、1年次の必須科目として「環境問題概説」が開講されている。文系学部で生態学の周辺領域を扱う科目が必須科目として置かれることはまれであり、方法論や授業デザインについては先行事例がほとんどない。そこで、本年度の「環境問題概説」では生物多様性問題を重点的に扱い、文系大学での必須科目としての生態学教育を試行錯誤しつつ実践した。学科の特性から国際性のある生物多様性問題を主軸に据え、経済活動に伴う森林伐採や土地利用変化、COP10の主要議題、外来種問題、バイオ燃料を具体的なテ-マとした。各回の授業では、まずテ-マについての講義をし、その後、そのテ-マと関わりのある質問を与えて、グル-プ議論をさせるという方法を取った。
学生たちは概ね授業に熱心に取り組み、グル-プ議論では実効性のある答えがでるなどの成果は見られたものの、クラスサイズが75人と大きいこと、自然観察などの実習ができないこと、専門知識がないため生物多様性問題の国際性を学生が把握できないことなど問題も多く、授業アンケ-ト結果からも学生の不満や戸惑いが感じられた。今回の発表では授業内容や問題点を紹介する。聴衆のみなさんから有意義なコメントをいただきたい。